生まれ変わったディズニーベア

Category: マーケティングとは何か

ゲストの夢を考えながら魔法を考えていくこと、これを繰り返し地道に行うことで企画として成立していくのであって、それがきちんとできていない場合はどんなブランドがあっても売れることはありません。これは始まったばかりのブランドであったとしても、何百年も続いているものであったとしてもその努力と苦労は変わらないことでしょう。

その一つの例が、今では東京ディズニーシーで大人気のキャラクター「ダッフィー」ではないでしょうか。

 2002年8月1日、アメリカ・フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド内に世界最大のディズニーグッズストア「ワンス・アポン・ア・トイ・ストア」がオープンしました。私が行った時も子供とはぐれってしまったほど広かったのを覚えています。

 そのオープン記念として作られた、顔がミッキーのシルエットのぬいぐるみが「ディズニー・ベア」でした。隠れミッキーをイメージしてデザインしたそうですが、残念ながらあまり流行らなかったのです。あくまで記念品のデザインとして作られたものでしたので、それ以上でもそれ以下でもなかったと言えます。
 しかし数年後、日本のディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド社の方が視察に行った際に、その「ディズニー・ベア」のことを知り、新たに命が吹き込まれることになります。
 当初は「ディズニー・ベア」のままでしたが、新たに「ダッフィー」と名付け、新しいバックグラウンドストーリーを作り、東京ディズニーシー以外にいないキャラクターとして生まれ変わらせたのです。隣の東京ディズニーランドでも販売していませんし、ディズニーのウェブサイトでの使用すら制限していたほどです。
「東京ディズニーシーだけで会える」「特定の店舗でしか購入できない」「着せ替えて、私だけのカスタマイズができる」という明快なポイントを生み、しかも心温まるバックストーリーと、ぬいぐるみでという特性から「感情移入しやすい」キャラクターとなったのです。今ではショーなどにも登場するほど人気となり、日本での成功によって、世界のパークにも登場しています。

これらはゲスト視点に立ってぬいぐるみを再度考え直した結果と言えます。
・どこの誰だかが分からないのではなく、明快なポジショニングにして分かりやすくした
・単なるアイテムではなく、一つのストーリーを作り、共感したくなった
・着せ替えができることで、私だけのもの、という所有価値を作った。