考える場所

Category: ひとこと

「くまのプーさん」は意外とクリエイティブです。

はちみつを採るためなら、風船で空を飛ぶことを考えたり、雲になりすますために泥だらけになったり。方法論はさておき、色々な発想をしています。

そんなプーさんがいつも考える場所は「考える場所」という所です。
「Pooh’s thhful spot」という看板が立っている丸太に座って考えています。
thufulとは、考え込む、物思いにふけるの意味の「thoughtful」を間違って書いたものです。
ひとまずそこに行くと、丸太に座り、片方の目を閉じて、頭を軽く叩きながら何かを考え、何か考え付くらしいです。
そこへ行けば思いつく、そんな場所があるのは企画者にとってうらやましいですね。

皆さんはどこで物事を考えますか。

私が聞いたことがあるのは喫茶店、風呂、公園など。人それぞれの場所があることでしょう。しかしながら、オフィスが一番発想できる、という話を聞いたことがありません。基本的にはオフィスにいる時間が長いわけですから、その場所が最も発想できる場所であることが望ましいでしょう。

私はオフィスとはインナーブランディングの場所、つまり社内の社員向けに理想イメージを共有する場所だと考えています。

ゲストに対してのブランドイメージ「アウターブランディング」はディズニーとしては当たり前で、ブランドの管理が徹底していることは周知のことでしょう。
一方で、私がチームで最も重視したことは、チームとして目指すべき理想像を掲示・啓蒙していくということです。クリエイティブ集団である意識を浸透させるためにどうするかを考えていました。私が伝えていたことはシンプルで「一番のファンになりなさい」ということです。

私たちが作ったものは、最終的にディズニーが好きなゲストの皆さんに購入・体験いただくことになります。ただし、その前に、その企画を世に送り出すか考え、判断しているのは企画しているプロデューサー自身です。ジャッジするためのフィルターがずれていたり、曇っていてはゲストが期待しているものなど作り出せません。ましてや、ゲストの期待に応えるだけでなく、それを超えるのが使命だと考えていましたので、ゲスト以上の「一番のファン」として自分自身が満足しなければ、「すごい」とクオリティとして満たしていないと言えます。
自分が好きでないものを、好きになれていないものを扱ったって良いものが生まれるわけがありません。自分が笑顔になれないものなど企画として成立しないのです。

ピクサーのオフィスはその最たる例で、自分たちの部屋をそれぞれがクリエイティブだと思う空間に改造しています。おもちゃ屋さんのような部屋もあればバー、そして担当している映画をテーマにした部屋など、「一番のファンたる空間」かつ「自分の発想が生まれる空間」で考えているのです。

私のデスクは本国のキャストが来ると見学ルートになるほどで(総務には注意されるほどで)一番発想できるデスクにしようと工夫を施しました。デスクにミニパークを作ってしまったのです。(さすがにその写真は載せられないのが残念ですが。。)

ディズニーで言えば、最も刺激を受ける場所は全体がディズニーの空間となっているテーマパークです。企画を考えるときに歩き回れればよいのですが、そうもいきませんので、ミニパークをデスクに置くことで頭の中で立体的に考えられるようにしました。

そしてそのデスクの隣に丸テーブルを置いて、その真ん中にはペンとポストイットと飴が常備されていてチームメンバーがいつでもやってきてブルースカイできるようにしていました。話をしながらパークを見て新たな発想のエッセンスを考えます。逆にパークを眺めてファンの気持ちになって企画を見直すことで、足りない部分が見えてくるのです。この丸テーブルから数多くの企画が生まれ、数多くの夢が実現してきました。

これは極端な例ですが、皆さんのオフィスにもちょっとした発想する空間を作るのはいかがでしょうか。一番のユーザーを体験できる場所、感覚に近い発想ができるきっかけを作るものを置くのです。例え観葉植物一つ、コーヒーメーカー1つであっても全然雰囲気が変わります。

それが定着すれば、プーさんの「考える場所」のように、ひとまず行くと何か必ず思いつく場所になるかもしれませんよ。