わたしが好きな言葉に「胸中竹林」というものがあります。
中国・北宋時代の画家が、まだ若い竹を見ながら水墨画で立派な竹を一気に描いたというエピソードがあります。
これは葉や節の成長をよく見ることで、胸の中にはすでに成長した竹を思い描くことができたから筆をとれたということなのです。
つまり、観察してシミュレーションすることで、心の中で完成図が完全に見えるということ。
なお、この本当の四字熟語は胸中成竹で、胸中竹林というのは私が単に間違って覚えてしまったものなので「造語」ということになりますが、まだ小さな1本の竹から竹林という大きな想像までできるという意味を込めて、間違ったまま使っています。
話が変わりますが、1971年にアメリカのフロリダに『ウォルト・ディズニー・ワールド』が完成します。しかし、残念ながらその5年前にウォルトは亡くなっていました。
完成したときに、兄のロイへのインタビューでこのようなやり取りがありました。
“It’s too bad Walt did not live to see this.”
“Walt did see it first. That’s why we are seeing it now.”
「ウォルトがまだ生きていてれば(この開園が見られたのに)、残念でしたね。」
「いえいえ、ウォルトこそが最初に見たんですよ(この夢の全貌を)。そのおかげであなたが今実際に見ることができているわけです。」
このエピソードは胸中竹林に通じますが、企画の最初の段階で成功した光景が目に浮かべられること、それができなければ実際の成功などありえないのです。
そして企画書は、全員に最初に共有できる未来ビジョンと言えるかもしれません。